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それは、覚悟と勇気の物語。あるいは、

メタへの異常な愛情の先にあったもの

大森弘昭 / VRonWEBMEDIA

※ このテキストは、筆者が昨年にnoteにて記した「メタへの異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて #MZM を愛するようになったか ~1周年ライブレポを添えて~」と対をなすものです。こちらのテキストをお読みいただく前に、よろしかったらご一読いただけますと筆者が喜びます。

 

※ 筆者は「メイト」で「ディナー」で「ジョジ民」で「めぐるーまー」で「朝ノ衆」で「バルス箱推し」で「アヒージョ」です。従って、本文章には多分な偏見などが含まれます。また、本文章は筆者の個人的な見解・主張であり「VRonWEBMEDIA」「株式会社81plus」の意見・主張を代弁・代表するものではありません。

 

序章 という名の長い前フリ

 

むかしむかしあるところに、3人の女の子がいました。

3人はとてもかわいく、踊りも上手で、歌もうまく、周りの大人たちから将来を期待される存在でした。

 

やがて3人は、町の中でも特に人気のあった踊りの学校に通うようになり、そこで3人は出会います。3人はグループを組み、一生懸命歌や踊りの練習に励みました。

 

すると、えらい大人たちが「アイドルとして活動しないか」と3人を誘いました。アイドルを目指していた3人をその誘いを受け、町でデビュー。周りの大人たちも、3人も多いに喜んでいました。


 

一生懸命活動する3人を見ていたえらい大人たちは、それから「都会に出てもっと広くアイドルとして活躍しないか」と誘ってきました。一念発起した3人は単身上京し、今の事務所に所属して再びアイドルとしての活動を続けることになりました。

 

えらい大人たちは、彼女をもっといろんな人に知ってもらうため、3人にある音楽家を紹介します。その音楽家はとっても若いのに、当時としては斬新で新しい音楽を作る天才だ、と評判が上がるほどの才能を持っていました。ここから、3人と音楽家による活動が始まりました。

 

音楽家が作り出す音楽は、アイドルとしてはあまりにも新しく斬新だったので、3人は不安になりながらついていくのがやっとでした。でも、徐々に人々に知れ渡るようになったことで、えらい大人たちは3人をメジャーデビューさせることにします。

 

メジャーデビューしてからは、音楽家の斬新な音楽づくりがどんどん先鋭化していく一方で、3人も徐々に新しい音楽に慣れていきながら貪欲にくらいついていきました。常に全力で、常に真摯に音楽やダンスと向き合いながら、3人にやってくるお仕事に一つ一つ取り組んでいきました。

 

しかし、どうしたことでしょう。

どんなに3人が頑張っても頑張っても、一向に人気の出る気配が見えません。

 

テレビのレギュラー番組を持ったり、冠のラジオ番組を務めたりしましたが、なかなか芽が出ないまま、年月が過ぎていきました。数少ないがらも熱心に応援してきたファンたちは、運に恵まれない3人を気遣いながらも、せっせせっせと応援を続けてきました。


 

そんな中、えらい大人たちは、3人に「これまでリリースしたシングルを収録したアルバムをリリースする」、と告げます。

 

彼女たちは喜びましたが、ファンの反応は逆でした。

当時、売れないアイドルがアルバムを出す・内容はそれまで出したシングルを収録したもので新曲収録がない、という事実は、そのアイドルが「解散」するという、ある種の一本道だったからです。

 

ファンにとってこのアルバムのリリースは、3人がアイドルではなくなってしまうかもしれないことを意味します。

それを敏感に感じ取ったファンの中から、大きな声を上げる人たちが現れました。

 

一人は、サブカルチャーの世界で絶大な人気を誇る、ニューウェイブバンドのボーカリスト。

 

一人は、日本のヒップホップアーティストの中でも5本の指に入るほどのスキルを持ち、ラジオパーソナリティをも務めるほどのカリスマラッパー。

 

そしてもう一人は、ファッションモデル、歌手、アーティストとして飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍を続ける、ショートボブの女性。

 

3人のファンは、思い思いの方法で、彼女たちの存在をアピールしました。一人は自分の番組で何度も彼女たちの曲をかけ続け、一人は自ら執筆するコラムなどでその存在を書き、DJイベントで彼女たちの曲をスピンし続けました。

そして、ラッパーは自分のラジオで、こう叫んだのです。

 

「アイドル界最後の希望」

「3人がダメなら、日本のアイドル界はもう終わり」


 

ラッパーの名前は「宇多丸」(RHYMESTER)。

ボーカルの名前は「掟ポルシェ」(ロマンポルシェ)、

そしてショートボブの女性の名前は「木村カエラ」。


 

広島からやってきた3人の女の子。

「Perfume」という名前の3人のグループが今どうしているかは、私がここで書くまでもないでしょう。

彼女たちは、結成から実に「8年」という期間を経て、熱狂的なファンの力に支えられながらブレイクを果たしました。今や、そのファンは世界中に存在し、今も第一線で活躍を続けています。

 

のっけからまったくMonsterZ MATEのことを一ミリも書いていませんが、ここに書くためにどうしても皆さんに知っていただきたかったのが、このPerfumeと、音楽家「中田ヤスタカ」と、そのファンが(そこに事務所の「Amuse」を加えてもいいでしょう)、一丸となって成し遂げた「軌跡」なのです。

 

本章 真面目なヤツが馬鹿を見ないミライは、ちゃんとあるってこと

 

私がこの2周年を迎えるにあたって、この1年間ずっと感じていたことがあります。その心境こそが、序章で書いた「売れる前のPerfumeのファンの心境」です。

 

私が若いころ(といっても15年ほど前ですが)、Perfumeがメジャーデビューを果たす前くらいに彼女らのことを知ったことをきっかけに、熱狂的な「Perfumeヲタ」として活動をしていました。なので、Perfumeが苦汁をなめ続けてきた時代を肌で感じながら、いつかこの人たちが報われてほしい、いつかこの人たちの頑張りが結果に結びついてほしいと願いながら、現場に通っていたものです。

 

今、実はこの「芽が出る前のPerfume」と「MonsterZ MATE」のお二人を、80%くらい重ねて見ています。

 

100%じゃないのは、まったく芽が出ていない、というわけではないから。

この記事を書いている時点でもうすぐYouTubeファン数8万人、一昨年の大みそかに「V紅白歌合戦」で感涙の1万人突破を迎えたのが嘘のようです。昨年はフェスにイベントにと

大活躍、今年はNHK出演をも果たすなど、その勢いは確かなものです。

 

でも、メイトのみんなは誰しもが思っているでしょう。

「桁が一つ足らん」と。

私もそう思っていますし、誰よりもMZMのお二人が一番そう思っているに違いありません。コーサカさんがよく言うではないですか。

「VTuberはオワコン? んなのまだ始まってもいねーよ」と。

MonsterZ MATEがたどり着くべき地平線は、まだまだ目の前に迫ってきてもいないのです。

 

だからといって、お前ら宇多丸師匠や、掟先生や、カエラちゃんになれ! と言いたいわけではありません。

推しを推すときに一番大事なこと、それをこの場を借りて皆さんと確認できればと思います。

 

私がPerfumeを追っかけているときにまず一番大事にしていたのは、推す側への「信頼」でした。あの子たちは本物だ、歌もうまいし踊りもMCも最高、そして楽曲に至っては最先端。だから全幅の信頼を置いて、全力で推せるんだ。その気持ちをひと時たりとも忘れませんでしたし、それ以前に彼女たち自身が忘れさせてくれませんでした。だから、何がなんでも全力で推し続けることができたんです。

 

掟ポルシェさんは、読売新聞のインタビューでこう話しています。


 

掟 「中田さんは当初「Perfumeのアルバムを作るんだったらベスト盤的なことはやりたくない」と言っていたと聞いたことがあります。やるんだったら完全オリジナルでやりたいと、非常に意欲的だったと。そういう人が結果的にベストアルバムを作っちゃった意味合いの大きさっていうのが浮き彫りになりますよね。」

 

宇多丸 「明らかにポジティブな状況ではなかったと。」

 

掟 「だからこそ、俺たちがなんとかしなければと思った。Perfumeのような本当に素晴らしい音楽をやっているアイドルが、売れずに消えていく様を何度も目の当たりにしてきたんです。Perfumeって本当にいいグループだったねと、後で語り継ぐだけのものにするには惜しすぎた。今度は多少なりとも尽力できる立場にある。スタッフでもないのに、どうやったらPerfumeが売れるかを本気で考えなければと思ったんですよ。俺だけじゃない、Perfumeのファンはみんな同じでした。当時からファンの人に会うたび、みんなが「どうやったら売れますかね?」って、所属事務所の人間でもない俺に聞いてきた。こんなアイドルは初めてですよ。」

 

2017年10月29日 読売新聞「popstyle」宇多丸×掟対談より引用


 

私は冗談でもなんでもなく、今MonsterZ MATEを取り巻く環境が、いい意味でこの頃のPerfumeにかなり近い状況下にある、と思っています。みんなが「MZMがどうすれば売れるのかな」って心配し、考えているような、この感じ。

「いい意味で」と書いたのは、あの頃のPerfumeと決定的に違うところ。MZMの現在において、閉塞感のようなものが薄い、というところです。

 

もちろん私の中にも不安があります。バルスさんが彼らがブレイクするまでどこまで持ちこたえてくれるだろうか、とか、ユニバーサルさんはどこまで彼らを支え続けてくれるだろうか、とか。

 

でも少なくとも言えることは、順風満帆ではないかもしれないけれども、MZMが上ってきた道が確実に上り勾配のままでいてくれている、という事実があり、そして、その道を進む歩みにおいて、MZMの二人やバルスのスタッフの皆さん、木戸さん、深山さんは至ってここまでくそ真面目に取り組んでいらっしゃり、それが確実に我々メイトにも伝わっている、ということではないでしょうか。

 

それこそが冒頭に書いた「全幅の信頼」です。この奇跡的で素晴らしい関係性を、MZMと我々の間で築き上げ、キープできていることこそが、何よりも重要なのです。

 

ならば。

我々は、先人たるPerfumeがそうしてきたように、MZMにも輝かしき未来がやってくるんだ、そう思って推し続けて大丈夫だよって、私は本気でそう思ってるんです。

 

ほら、よく「真面目なヤツが馬鹿を見る」とかって、よく言うじゃないですか。私はこの言葉が大嫌いなんですけど、それはなんでかっていうと、馬鹿を見なかった人たちのことをこの目で見てきたからです。

 

Perfumeは長い期間(8年も!)まじめにやってきて、そうしてようやく日の目を見ました。MZMに至っては、チャラくやってるように見せて実はクッソ真面目、っていうさらに強力な真面目属性持ちなわけです。

そんな、実直に、真面目にやってきた人たちが「馬鹿」を見ないミライは、ちゃんとあるってことです。

 

だから、大丈夫。

全幅の信頼をおいて、推し続けましょう。

こんなご時世ではありますが、そんなことを吹き飛ばすくらいの「信頼」を胸に、推しを推し続けてまいりましょう。

そして、満面の笑顔で、彼らの2周年を迎えようではありませんか。


 

終章 信頼に必要なのは、覚悟と勇気

 

掟 「アイドルポップスでなくても、CDってまず売上げですよね。そのビジネスがビジネスとして成立してないのに、それでも同じ路線で続けていくって、これはもうある一定の信念を持ってないと絶対できないことで。」

 

 宇多丸 「そうそう。よっぽど絶対これが正しいと思ってなきゃおかしいはずなんですけどね。アイドルに限った話じゃなくて、私らはある意味同業者なんで、そこの難しさは骨身に染みてわかってる。」

 

 掟 「でも、当時のPerfumeは決して結果を出してるわけじゃなかった。それなのに、なぜ同じ姿勢のまま持続してこれたんでしょうね?」

 

 宇多丸 「まあ、いろんな・・・、単に放置されていたからかも(笑)。」

 

 掟 「まあ、会社に体力があって、現場スタッフに好き勝手にさせてたっていう状態だったんでしょうね。」

 

 宇多丸 「ただ、評価は高いっていうところは多分伝わってたと思うんですよね。」

 

 掟 「うん。多分この路線が間違いなく支持を得てるということは、会社側にもなんとなく伝わっていたんでしょうね。そこでアミューズさんがすごいのは、ファンの声を聞く耳を持ってたということで。芸能事務所は往々にして、ファンや外野の声なんて聞き届けないもんですよ。それがPerfumeのスタッフは違っていた。ちゃんとファンの側からのフィードバックを聞き届けて、ある一定の信念の材料としてきたからこそ今日のPerfumeがあるんだと思う。」

 

2017年10月29日 読売新聞「popstyle」宇多丸×掟対談より引用


 

もう一度、宇多丸さんと掟さんのインタビューから引用してみました。

 

この世界……バーチャルタレント・バーチャルアーティストの世界は、何もリアルの世界と不可分ではなく、リアル世界のビジネスの法則がそのまま当てはまる、というのは、皆さんもご理解頂けることと思います。だから、

 

もちろん私の中にも不安があります。バルスさんが彼らがブレイクするまでどこまで持ちこたえてくれるだろうか、とか、ユニバーサルさんはどこまで彼らを支え続けてくれるだろうか、とか。

 

なんて心配をしちゃうんですよね。特にVTuberという世界はまだ始まったばかりで、現時点でもトライ&エラーの真っ最中にありますから、いろんなことが起きます。

 

おそらく今後ファンである私たちにとって必要なのは、「覚悟」と「勇気」だろう、って個人的に勝手に思っています。

上のインタビューで、AmuseさんがPerfumeを売り出し続けた想いの中には、間違いなく「覚悟」と「勇気」があったはずで、でなければ当時からキレッキレだった中田ヤスタカさんを起用しないし、8年もの長い期間に渡って彼女たちをサポートし続けられるわけがないんです。

 

Amuseは大きな事務所だから体力がある、と考えてしまいがちですが、それはちょっと正しくなくて、大きい会社であるが故にビジネス的な目線はとってもシビアだし、そもそも「売れるかどうか」、というポイントは事務所の大小は私達が思うほど影響しません。

 

Perfumeと一緒に上京し活動していたアイドルグループの集まりは「BEE-HIVE」と呼ばれていました(今でいうAKBとか、ハロプロみたいなもんです)。

総勢17名のタレントさんが所属していましたが、実際に芽が出たのはPerfumeの3人と、当時「BOYSTYLE」というグループにいた、女優の村川絵梨さん、声優の田野アサミさんくらい。

Amuseはそのあと「さくら学院」というアイドルグループを再びはじめ、ここからBABYMETALを輩出するんですけど、逆に言ってしまうとまだBABYMETALしか輩出できていないんですね(さくら学院そのものの人気は比較的高いです)。

ワンオクとか、BABYMETALがいるあのAmuseでもこんな感じなんです。

 

ちょっと脱線しちゃいましたね。

何が言いたいのかというと、少なくとも私が「推し」活動を続けていくうえで、推し対象に全幅の信頼を置いて「推す」時に何よりも必要なのは、「覚悟」と「勇気」の二つ。

私は、それをこれまでの15年以上に渡る推し活動で実感してきました。そして、私はこの二つを発揮すべき相手として、MonsterZ MATEを見ています。

 

Perfumeがいばらの道を歩き切った先には、栄光が待っていました。それは歴史が証明しています。

MZMの歩く道にだって栄光はあるはずなのです。私はそのことをただ信じ、全幅の信頼を根拠にしながら、覚悟と勇気を持って、彼らをこれからも推し続けようと思います。

 

こんな時代だからこそ、ミライを信じましょう。

MZMのお二人がたどる道を、我々もそれぞれのやり方で照らし、物語を紡いでまいりましょう。

それが、いい年こいたオジサンの、ささやかな「決意」です。



 

2020/4/22 テレワークが終わった勢いの自宅にて

大森弘昭

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